
「東京青年会議所(以下、東京JC)って、どんな組織だと思いますか?」
そう聞かれて、パッと答えられる方はかなり少ないでしょう。
「ボランティア団体?」
「人脈作りやビジネスの相談をするための場?」
確かに、私たちは日々、公開討論会やわんぱく相撲の開催など、社会問題を解決するための活動に無償で取り組んでいます。集まっている人も、経営者や起業家、士業、医師、会社員など、ビジネスの第一線で忙しく働く20歳から40歳までの大人たちです。しかし、本当の姿は、そのどちらでもありません。ひと言で表現するなら、東京JCは「社会を動かすリーダーを育てるトレーニングジム」なのです。
ここで自分を真剣に鍛えたメンバーは、卒業する頃には「社会を動かすリーダー」へと変貌を遂げます。
例えば、自社の利益だけでなく「街全体の豊かさ」をデザインし始める経営者。あるいは、目の前のビジネスの枠を超え「10年後の社会に必要な仕組み」を考え、実行する起業家。といったように、自分や会社の枠を超えて、社会を動かすリーダーへと成長していくのです。
こう聞くと、「元々、意識が高い人たちだったんでしょう?」と思われるかもしれませんね。しかし、最初から「社会のために!」と燃えている人は、実はほとんどいません。
「横のつながりが欲しい」
「ビジネスのヒントがあれば」
「先輩に誘われて断れず……」
ごく普通の動機で入会される方が大半です。では一体、どうしてそんな普通の大人たちが、社会を動かすリーダーへと変わっていくのか。本コラムでは、東京JCの取り組みを紹介しながら、大人がひと皮むけてしまう理由を説明します。
運動構築の「泥臭いプロセス」が、リーダーシップを鍛える!

なぜ、普通の大人たちが、たった数年で「社会を動かすリーダー」へと変わるのか。その答えは、東京JC独自のプロジェクトの進め方、通称「運動構築」にあります。
私たちは、年に一度、「地域の課題を解決するためのプロジェクト(JC運動)」を実施します。
このJC運動の、企画から実行までの設計を「運動構築」と呼ぶのですが、これが想像以上にタフで、地道な作業の連続なのです。
まず、JC運動の核となる「地域の課題探し」からして一筋縄ではいきません。
今はAIで何でも調べられる時代ですが、メンバーはあえて、“対面”で行政担当者や有識者にヒアリングを重ねます。
メールやweb会議で済ませる“効率”よりも、会わなければ得られない緊張感、温度感から育まれる“心の通い合い”を大切にする姿勢が、地域の“真の課題”を見抜く力を養ってくれるのです。
さらに、運動構築のプロセスでは、行政の担当者をはじめ、理事やOB、前年度のメンバーなど、多方面に協力をお願いし、承認を得なければならない場面が何度も訪れます。ここで試されるのが、相手に「この人のためなら一肌脱ごう」と思わせる力。
相手に納得して動いてもらうためには、「なぜ今、この運動が必要なのか」という明確な目的と、「この街の未来を良くしたい」という熱い想いが必要です。
自分の想いを言葉にし、論理と情熱で相手の心を動かして巻き込んでいく。この「本気のプレゼン」こそが、人を惹きつけるリーダーとしての真の魅力を磨いてくれます。
正直に言って、今の時代において、このプロセスは非効率の極みかもしれません。
しかし、自分の頭で考え、自分の足で動き、熱意と誠実さで人を動かしていくという、この「運動構築」の泥臭いプロセスこそが、決断力や論理的思考、そして何より「人を巻き込む力」という、リーダーに欠かせない土台を鍛え上げているのです。
「失敗してもいい」が大人を強くする。40歳までの「全力チャレンジ」の場

東京JCでは、年間100件以上の運動が実施されていますが、そのすべてが「大成功」というわけではありません。
必死に考え抜いた運動が、思ったほど地域に届かなかった……なんてこともあります。でも、それを「失敗だ」と責める人は誰もいません。
なぜなら、私たちは、「運動の成果だけでなく、構築〜実施までのプロセスでぶつかる壁をどう乗り越えたかという“メンバーの成長”」も大切にしているからです。
ここは、得意なことを披露する場所ではなく、苦手なことにも挑戦する勇気を持って飛び込み、自分を鍛え上げる場所。いわば、大人が全力で転べる、貴重な「チャレンジの場」なのです。
そんな挑戦を後押ししているのが、「単年度制(1年任期)」という人事システムです。どんなに優秀なリーダーでも、同じ役職に居座ることは許されず、1年経てば必ず交代。次から次へと、新しいメンバーが「主役」として矢面に立つ仕組みになっています。
昨日まで新入会員だった人が、翌年にはプロジェクトの責任者になる。普通の会社なら足が震えるような状況でも、東京JCには「とにかくやってみなよ!」と背中を叩いてくれる仲間と、失敗を許容する文化があります。だからこそ、メンバーは安心して全力で活動に取り組むことができるのです。
加えて、「40歳で卒業」というタイムリミットもあります。出し惜しみをしている暇はありません。この限られた一瞬にすべてを賭ける集中力と、挑戦を繰り返す日々。その積み重ねが、大人の皮を、一枚、脱ぎ捨てさせてくれるのです。
「一生モノの充足感」が待っている。だから、この厳しいトレーニングは癖になる!

ここまで読んでくださった方は、「東京JCの正体」が少しずつわかってきたのではないでしょうか。でも、同時にこう思うかもしれません。
「仕事だけでも忙しいのに、なぜメンバーはそんなに大変なトレーニングを続けられるの?」と。
その答えは、とてもシンプル。自分の利害を抜きにして本気で汗をかいた時、そこに「一生モノの充足感」があるからです。
自分の想いに誰かが賛同してくれた。周りが動いてくれた。そして、社会がほんの1mmでも、自分の手で動いた…。そんな手応えを感じた瞬間、何にも代えがたい自己肯定感に包まれます。
―自分のためだけじゃない、誰かのために動くことって、こんなに満たされるんだ―
この気づきが、視座をぐっと引き上げるので、メンバーは「自分や会社の利益」という枠を飛び出し、住んでいる街や地域の未来を、自分事として考えられるようになるのです。
「なんとなく」入会した普通の大人が、“社会を動かすリーダー”として変貌を遂げるのは、ここで、誰かのために汗を流す喜びを知ってしまうからなのかもしれませんね。
大人になってから、これほどまでに熱くなれる場所は、そう多くはありません。
このコラムを読んだあなたが、少しでも「東京JC」という組織、そして「社会を動かすこと」に興味を持ってくださったなら、とても嬉しいです。



