2026-05-07

東京青年会議所(東京JC)は、地域社会の課題を解決するべく、日々“社会開発運動(JC運動)”に取り組んでいます。
こう聞くと、日本国内のみで活動している団体、という印象を持たれるかもしれません。
実際、これまでのコラムでも、子どもたちの心身を育む“わんぱく相撲”や、新宿・歌舞伎町の悪質な客引き被害を防ぐための啓発キャラクター“ぼったくりす”を活用した街頭活動など、東京JCが地域のリアルな課題に向き合ってきた姿をご紹介してきました。
しかし、東京JCの活動の舞台は日本を飛び出し、世界にも繋がっています。なぜなら、東京JCが所属している国際青年会議所(JCI)は、世界約120の国と地域にネットワークを持つ世界最大級の青年団体だからです。
JC運動においても、“個人の修練(Training)” “社会への奉仕(Service)”と並び、“世界の友情(Friendship)”を三信条の一つとして掲げ、自己成長や地域社会への貢献だけでなく、国境を越えた友情を育むことを大切にしています。
そのため、東京JCには国際交流に関わるチャンスがたくさんあるのです。
代表的な国際交流イベントとしては、アジア・太平洋地域のメンバーが数千人から1万人規模で集結する巨大カンファレンス“ASPAC(Asia Pacific Area Conference)”や、約120の国と地域から数千人の若手リーダーが一堂に会する“世界会議(JCI World Congress)”などがあり、毎年開催されています。
なお、これらの国際交流イベントは、決して特別な役職の人だけのものではありません。たとえ「海外は初めて…」「英語が苦手」という方であっても、JCメンバーであれば、誰だって参加が可能なのです。
一方、このような国際交流イベントとは別に、東京JCの代表として海外のメンバーと民間外交をおこなう“海外公務”も存在します。これは、役職者やアテンドを担う部署のメンバーなど、一部に託される大役。ハードルが高いため、JCメンバーの中には、自分には関係のない、遠い世界の話のように感じている方も少なくありません。


2026年3月の海外公務として、マレーシアで開催された“ASPACセネターゴルフ”※に、理事長推薦で参加した理事の増田拓真君と江田輝一君。この大役に挑戦した2人も、まさにそんな戸惑いを抱えていました。
「そもそも自分には縁がない」「語学力がない自分が行っても、何もできないのでは?」
そんな迷いを抱えたまま飛び込んだ、2泊4日の海外公務。しかし、帰国した2人の価値観や考え方は、出発前とは劇的に変わったといいます。
そんな2人を現地で支えたのが、国際交流の経験が豊富な、海外接点拡大委員会 委員長・楠原章央君。海外公務の現場を知る立場として、今回の挑戦をどのように見ていたのでしょうか。
増田君、江田君が現地で体験したこと、そして2人のアテンドを務めた楠原君が感じたこととは。本コラムでは3人それぞれの胸の内を紐解きながら、東京JCにしかできない国際交流の本質に迫ります。

※ASPACセネターゴルフとは
アジア太平洋地域の現役メンバーと卒業生が一堂に会する国際大会。各国を代表する若きリーダーや、社会に大きな影響力を持つ“セネター(名誉会員)”たちが、ゴルフという共通言語を通じて国境を越えた信頼を築く、“民間外交”の場です。
正直、「自分には関係ない話」だと思っていました

──増田君と江田君は、海外公務の打診があったとき、どんな気持ちでしたか?
【増田】
そうですね。私は普段、“財務審査特別委員会”の責任者として、東京JCの運動の財務審査を行っています。職業も弁護士で、国際交流には馴染みがなく、海外公務は自分には関係ない話だと思っていました。
基本的に海外公務は、東京JCの理事長、副理事長、専務など、一部の限られた役職者や、アテンドをする役割の部署のメンバーが行くものと思っていたので、今回、理事長から声をかけられた時は、「え?僕がいくの?」と驚きましたね。
ですが、同じ審査系の理事を務める江田君も参加するとのことだったので、「それなら自分も行ってみるか!」と参加を決めました。
【江田】
私は、“規則審査特別委員会”の責任者として、東京JCの運動の規則面(公益社団法人としての細かなルールの確認等)の審査を行なっています。
増田君と同じで、海外公務は他人事だと思っていたので、正直、「行く意味あるのかな……」と、かなり後ろ向きでした。特に英語が得意なわけでもありませんし、仕事で多忙な中、わざわざ時間を割いてマレーシアに行くことに価値を見出せなかったんです。
ですが、最終的に、「意味があるかどうかは、自分自身の向き合い方一つで変わるはずだ。」と考え、自分を変えるきっかけにするべく参加を決めました。
【楠原】
“海外公務”って、何をするのかイメージが湧きにくいので、戸惑いますよね。私に至っては、入会当初、東京JCが何をしている団体なのかすらよくわかっていませんでしたよ(笑)
ただ、私は英語が好きだったこともあり、「グローバルなネットワークが欲しい。国際関係の活動に関わりたい。」という想いをずっと抱えていたんです。そのため、入会翌年の2025年には、国際フレンドシップ委員会の副委員長となり、今年2026年は、海外接点拡大委員会の委員長と、海外公務や国際交流に関わるキャリアに絞り、やりがいを持って活動をしています。
今回、お二人が初めての海外公務に参加されると理事長から伺ったときに、「東京JCの国際交流の楽しさを知っていただきたい」と思いました。未知の世界でも、“入り口”が楽しければ次も行ってみようかなとなります。「色々な世界を見れて面白いですよ。世界は意外と近いですよ。」ということを伝えたかったんです。

──増田君と江田君にとって、海外公務はかなり遠い世界の話だったんですね。一方、国際交流に興味をもつきっかけを作りたいと考えていた楠原君。共にマレーシアの地に着き、お2人にどのような驚きや心境の変化があったのか、ぜひ詳しく聞かせてください。
英語が得意じゃなくても、海外メンバーと通じ合えることに驚き
──実際、マレーシアでの海外公務に参加して、驚いたことはありますか?
【増田】
JCIという組織に属しているということだけで、皆さんフレンドリーに接してくださるので、壁を感じることなくフランクに交流できたことに驚きました。この雰囲気のおかげで多くの海外の方と話すことができて、とても楽しかったです!
普段あまり接点の多くない、渉外戦略室の理事や海外接点拡大委員会の委員長をはじめとするメンバーとも交流ができたので、組織への理解も深まりました。

【江田】
私も同じです。通常の国際交流であれば、相手がどのような人かわからないので、打ち解けるまでにもっと時間がかかりますし、高い語学力も求められると思います。それが、皆同じJCIに所属する同志であるというだけで一気に距離が近くなり、自然とコミュニケーションが取れることに驚きました。英語力が不安だったのですが、まさに杞憂でしたよ。
同時に、「“志でつながる”とはまさにこのことだ!」感じました。ただ海外の知り合いができるのではなく、同じ想いや価値観を持つ仲間ができる。これこそが“世界との友情(Friendship)”なんだと実感しました。
【楠原】
私も、初めて海外公務に行ったときは、「JCIという共通点があるだけで、初対面でもこんなにも円滑にコミュニケーションが取れるのか!」と驚いたものです。
これこそが、東京JCにおける国際交流の本質なんですよね。
JCIには“JCI用語”という共通言語があります。プレジデント(理事長)がいて、役員がいて、地域のために活動している。この構造が世界共通だから、たとえ英語が喋れなくても、お互いの役割や志を理解し合えるんです。
これは、旅行やビジネスで海外に行くのではなく、東京JCとして海外に行くことでしか味わえない感覚だと思いますよ。
──JCIという共通点1つで世界中の人とつながれるという事実は、驚きの発見ですね。「英語ができないから、自分には国際関係の活動はムリかも……。」と思っている方にとっても、希望になる話だと思いました。
海外という“非日常”の経験が、自分を変える!
──この海外公務を通して、自分の意識や価値観に変化はありましたか?
【増田】
「何事も否定せずにまずはやってみよう」と思えるようになりました。
実は当初、自分には関係ないと思っていたことに加え、わざわざ平日に海外へ行くことにためらいもあったんです。ですが、飛び込んでみれば新しい発見と感動の連続で、今では、「行って良かった」と心から思っています。
【江田】
「物事の意味や価値は自分自身で創るものだ」という考えが身に付きました。
当初は、「英語ができない自分が海外に行っても意味がない」と決めつけていましたが、志でつながる経験をしたことで、自ら積極的に動けば友情の輪はどこまでも広げられると確信したんです。
東京JCの活動には、一見すると価値を見出しにくいものもあるかもしれません。しかし、外側に答えを探すのではなく、自ら飛び込み、自分なりの意味を見出していく。その姿勢こそが重要なんだと強く思うようになりました。

【楠原】
お二人とも、良い刺激を受けてくださったようで嬉しいです。
やはり海外という非日常での経験は、凝り固まった価値観を鮮やかに変えてくれますよね。
私自身もそうでした。昨年、初めて海外でイベントを運営した際、100%準備したつもりでも現地では50%も通用せず、「日本と同じようにはいかない。これは大変だ。」と痛感したんです。その経験があったからこそ、自分一人で抱え込まず“人に頼る”スキルが身に付きました。
委員長になってからは、マネジメント力も鍛えられています。
海外公務は時間の確保が難しく、メンバーによって忙しさもキャパシティも異なります。また、JCは給料がもらえる活動ではないからこそ「どうすれば皆がやりがいを持って楽しく動けるか」を常に考えなければなりません。これがなかなか難しく、一朝一夕にはいきませんが、これこそがリーダーシップの“修練”だと感じています。
──慣れ親しんだ日本を離れ、アウェイな環境で国境を越えた信頼を築く。そんな“民間外交”の最前線では、新鮮で楽しい出来事もあれば、予定通りにいかないアクシデントも当然起こります。しかし、志を同じくする世界の仲間と出会い、心を交わし合うという強烈な“非日常”の経験こそが、凝り固まった価値観を大きく変えるきっかけになる。
3人のお話を聞いていると、新しい自分に出会うためのヒントをもらったような気持ちになります。

何事もまずは“知ること”が大事!
──まだ海外イベントに参加したことのないJCメンバーや、東京JCのことをよく知らない方々へ、一言お願いします。
【増田】
もしチャンスがきたら、まずは一度、行ってみましょう!
私はこの海外公務のおかげで、マレーシアという国が大好きになりました。これは、JCIでしか経験できないメンバーとのつながりや、価値観の共有があったからです。
海外公務以外にも、東京JCに所属していれば国際交流の機会は豊富にあります。思い切って飛び込んでみると、本当に楽しいですよ。私は、この経験から得た“何事もやってみる精神”で、今後の活動にも積極的に取り組んでいこうと思います。

【江田】
自分を成長させたい、視野を広げたいと思っている方は、ぜひ参加してみてください。
「行って意味があるのかな…」と迷い、受け身でいるのはもったいないです。積極的に飛び込めば、たくさんの新しい出会いがあり、学びがあります。それらの経験全てが、最終的には自分自身や組織を動かす力になっていくはずです。
私は当初、参加をかなり迷いましたが、一歩踏み出したことで、英語ができなくても世界中のメンバーと仲間になれること、そして自分の意思次第でその輪はどこまでも広げられることを実感しました!

【楠原】
お2人とも、海外公務中はとてもいい笑顔で楽しんでくださっていたので嬉しかったです。
私は、「JCメンバーは絶対に海外に行くべき!」とは全く思っていません。興味が持てなければ行く必要なんてないです。でもその判断をするためにも、まずは“知ること”が重要だと思っています。海外公務に限らず、どんなことでも“知ること”で、次の一歩が見えてくるはずですから。
2026年6月には、東京でAPICC(Asia Pacific International City Conference)がありますし、ASPAC(アジア太平洋エリア会議)も新潟で開催予定です。海外だとハードルが高くても、日本国内、特に東京なら気軽に参加できる方も多いのではないでしょうか。
国際交流に興味がある方はもちろん、海外に行ったことがない方も、参加して“知ること”で、新しい発見があります。ただの旅行ではなく、JCIというオフィシャルな形で関わる国際交流は、本当におもしろいですよ。
ぜひ、一歩踏み出して新しい世界を“知って”ください!
──貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
「海外公務なんて自分には関係ない」と思っていた2人が、ほんの少し勇気を出して一歩踏み出した。ただそれだけで、国境を越えた“世界の友情”を肌で感じ、自らの価値観さえも鮮やかに変えていきました。次は、あなたが世界を覗きに行く番かもしれません。
大切なのは、何事もまずは“知ること”。その先にある新しい自分に出会うために、まずは一歩、踏み出してみませんか?






